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戦後71年目の『野火』塚本晋也監督舞台挨拶レポート

8/20(土)、野火の塚本晋也監督をお迎えして舞台挨拶を行っていただきました。
71年目の戦争特集のうちの1本として上映中の野火ですが、本作の熱量は1年経っても衰えることはありませんでした。昨年も塚本監督には当館にお越しいただきましたが、2回目の今年もたくさんのお客さまがご来場されました。今回もたくさん語っていただきましたので、塚本監督のご発言をまとめてみました。

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戦後70年〜71年目の『野火』

去年の前後70年というのは数字もはっきりとしていますし、一応盛り上がりを見せるんですけど、1年経っちゃっただけで急に熱が下がってしまうのが一番怖いなと思っていました。この作品はできれば71・72・73年・・・と毎年終戦記念日になったら、ちょっとずつでもいいので上映したいと思っています。71年目のほうが70年目より戦争の記憶から遠ざかってるわけですから、もっとやらなければと。

どこの映画館でもアンコール上映なんですけど、初めてご覧になる方が多かったですね。反応としては去年に最初にお見せした時のような、どん曇りな雰囲気が今年もまたあったというような感じです。(苦笑)
 
 
一番最初にこの映画を上映したのがベネチア国際映画祭だったんですが、スタンディングオベーションはすごく長かったんですが、表情がみなさん真っ暗だったので、不安になりました。
東京で上映開始しても暗い反応が続いたので、不安に駆られてたんですけど、(上映開始から)一ヶ月くらい経ってから、感想が少しずつ出てきまして、どうもすぐに反応するのは難しい映画のようです。最初は年配の男性中心だったのが、どんどん拡がっていって、お子様がいらっしゃるお母様とか、若い人にも広がってですね、反応をツイッターやフェイスブックで上げてくださるようになったりとか、いろんな著名な方が自ら声を上げてくださったりしてくれたおかげで、かなり多くのお客様が見てくださったのが嬉しかったですね。
身内に戦争体験者がいらっしゃる方からいろんな話を教えていただいたりして、野火で描いたようなことが本当にあったということがますますわかってきました。

僕自身も作った後に、全国の劇場に行くことを決めたものの、元々社交的というわけでもないので(笑)、なにをしゃべるか決めておらず、皆さんと時間を共有したいという気持ちで劇場回りをしていました。

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美しい自然と愚かな人間の対比は何がなんでも描く

監督とか出演とか別け隔てして考えてなかったんで、自主映画なので基本的には全て自分たちでやらなきゃいけないわけですけど、監督も撮影も編集も出演も全部自分でやる、野火そのものに体全体でぶち当たる感じで使えるものは全部使うんだという気持ちでいました。注意するというよりは、使えるものは何でも使って野火を形にする。そればかり考えていました。
野火に全身全霊であたるということばかり考えてましたので、特に役作りもなくですね、ホントに痩せるだけですね。

原作を高校生の時に読んだ時に、なんでこんなちっぽけな人間が美しい自然の中で愚かしいことをしてるんだというコントラストが一番に頭に残ったので、どんなにお金がなくても、それを描かないとこの映画を作る意味がないと思っていました。自然の美しさと人の愚かしさを描くというのは、(最初よんで映画化すると決めた時から)変わらなかったですね。

映画館行脚で印象に残ったこと

野火は自主配給ながら全部で76館の劇場で上映していただきました。そのうち45館くらい行きましたが、そのどれもが違う魅力を持っていましたね。
映写室なんかも神聖な場所ですが、入れてくれて。中に神棚があるんですよ。神棚の横にエロピンナップが貼ってあって、神とエロが同居してたりして(笑)。映写技師の方が心を込めて映写するわけですが、映写窓の上のとこに一番お気に入りのエロピンナップが貼ってあったりして、毎日それを見て心を込めて上映してるってことがわかったりですね(笑)、そんなエピソードの連続でした。

政治的思想を入れずに作る

業界の無言の圧力のようなものは、暗黙の自粛というか空気を読むというかそういうのもありますが、具体的にはお金が出ないということはハッキリとあります。企画書を出しても、本当に3秒と話が続かない感じですね。他の企画ならもう少し聞いてくれるんですが、野火だと「いやないね」、という感じで。
昔はいくらかかるんですかと聞かれて答えると、「良い企画だけどちょっと高いですね」、なんて反応でしたが、今は内容で「ないよ」という感じで。理由は特に聞いてませんが、暗黙の自粛ということなのかな。お金を出す人にとっては作っても不安が大きいんじゃないかと思います。
何十年も作りたかった映画ですし、またこういう映画が作りづらいということそのものがイヤだったので、その両方のことを考えても意地でも作って、この時代に投げつけなければという気持ちでした。

野火というのは政治的思想とか社会的思想とかを入れずにやろうと決めていました。そもそも映画というのはそういうもので、思想を入れた瞬間にプロパガンダ映画になってしまうし、芸術の目的じゃなくて運動の目的になってしまうと映画の魅力が失われてしまうので、あくまでも感じでいただきたいと思って作っています。どう感じて考えていただいてもご自由です。極端なことを言えば、こんなヒドい世の中になるんだったらもっとしっかり軍備を整えるべきという感想を持つ人がいてもいいぐらい幅が広いものです。ただ僕の希望としてはとにかくここには近づきたくない、嫌だという思いを強くしていただきたいというのはあります。

自分も今や父親ですが、野火は何十年も作りたかった作品ですが、かつてより今の方がモチベーションが高いというか。要は次の世代のことが心配になるような年齢にもなってきてしまったんで、そういう若い人たちがみすみす肉体を壊しに行くことに大義は絶対にないと思うんです。

 
 
 
それからシン・ゴジラでも(役者として)大活躍してますので、シン・ゴジラもぜひご覧ください。
来年にはご存命の映画監督の中で一番尊敬しているマーティン・スコセッシ監督の沈黙という作品に、それもすごい重要な役で出演させていただいております。見たら涙が絶対出ると思いますので、こちらも楽しみにしていただければと思います。
 
 
※野火は当館で8/26(金)まで上映いたします。