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あつぎ映画祭【こどもと映画】山村浩二監督トークショー レポート

2/25(土)より開幕した第6回あつぎ映画祭。今回は【こどもと映画 ~せかいのえほん・おとぎばなし】と題して子供も大人も楽しめるアニメーション作品を上映しております。
2/26(日)には山村浩二監督をお招きして、代表的な3作品の上映と監督によるトークショーを実施いたしました。監督は各作品を詳しく解説してくださり、作品をより一層楽しめるお話となりました。
その様子をご紹介します。

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『サティのパラード』
サティの「パラード」が作曲されたのは100年位前。エリック・サティはフランスの作曲家で「ジムノペティ」等はとても有名で、よく映像にも使われている作曲家ですね。調べてみると日本で非常に人気があるというのがわかりました。本国フランスでは、どちらかというとアカデミックなクラシックな世界の中ではやや異端児というか、未だにあまり正当な評価を受けていない、ややスノップな存在ではあるのですが。
僕はサティの音楽にもちろん影響を受けて大好きで…というのもあるんですけど、
「パラード」はバレエの音楽で、今年(2017年)がちょうどパリで初演されてから100年という記念の年だったんですね。調べてみると、このバレエの舞台衣装と大きな緞帳の絵をパブロ・ピカソが描いているということを知りまして、この脚本というか企画をしたのがジャン・コクトーでもあり、当時の錚々たる色んな分野の芸術家の方たちがひとつのバレエを創り上げていることがわかりました。その資料を見てみると、ピカソの衣装デザインなんかがとても魅力的で、このバレエを自分で見てみたいなという思いが最初にありました。
そのうちにもしかするとこれをアニメーションにすると面白い題材かもしれないというところで、作ったのがこの作品です。いつかやろうと思っていたのですが、3年位前にふと、ちょうど100年の記念の年が今年だということで、なんとか2016年中に…さらにちょうど去年もエリック・サティの記念の年で生誕150周年というタイミングもありまして、それで急遽作り始めました。

当時バレエが上演された時、実は全然評判がよくなくてですね、不評だったんです。やはり伝統的なクラシックの世界というのは全然違うわけです。バレエの舞台の上でサーカスの呼び込みをやって、そこに現実的な空間を作るというのがある種の特殊な感じだったわけですね。そして映画の中でも出てきますけどサイレンの音とか宝くじのガラガラといういわゆる雑音ですね、そういうノイズをいっぱい入れたりある意味現実感を舞台に持ち込んだ。それまではバレエというと美しい夢見るような世界を舞台の上でやっていたはずなのに、いわゆる見世物的なサーカス的なものを舞台に、バレエに持ち込んだということで、とても評判が悪かったんです。

制作のきっかけのもうひとつが、この作品のレビューの時に初めてシュルレアリスムという言葉が使われたということです。まだシュルレアリスムとかダダイズムいう現代の芸術がパリで盛り上がる前にシュルレアリスムという名をバレエにつけたという。

当初は評判が悪かったのですが、バレエ音楽、サティの曲としての力があって、当時上演されたバレエ音楽の中では現代まで途切れることなく上演されるような曲になっていった。100年前から現代の芸術につながるような流れの原点がこのバレエにあるんじゃないかなと、芸術というものが高級なブルジョワのものから庶民のものへと下りてこようとしたーーー実際にサティは曲の中で当時のポップスとか、まだフランスに入ったばかりのジャズの要素を入れて音楽的にも非常に面白い実験をしてまして、そういう庶民的なポップカルチャーとある意味ハイソサエティな音楽、バレエというものが融合したというところで、今でいうアニメーションを映像で表現すると面白いのではないかなと思い、作った作品です。

ちょうど今年は日本の漫画生誕100年という記念の年で、1917年に最初の劇場型のアニメーションが日本で作られたのですが、そういう意味でもアニメーションを日本で作る意味が少しはあるのかなと思いつつ作りました。

『年をとった鰐』
これはフランスのレオポルド・ショヴォーという児童文学の作家さんの作品です。
いろいろ調べてみると、サティはもちろん認められてないとはいえ誰でも知っている作曲家ですが、ショヴォーに至ってはフランスで色々特化した専門的な方もほとんど知らないんです。絵本を専門に扱っている問屋さんに行っても知らないと言ったり置いてないと言ったり、児童文学と文化人の辞典を調べてもらっても数行載っているくらいで、本当に知る人ぞ知るという感じの人だったのですけど。
現在は1~2冊、フランスでも絵本が再販されたりしているんですけど、この『年をとった鰐』なんかはフランスでも熱心に探さない限りは全然見つからないような作家さんです。
これもなぜか日本で出版されていて、僕もそれまでずっと知らなかったのですが、ある絵本の紹介でイラストレーションが魅力的だなぁと思って名前を知って、これをアニメーションにしたら面白いだろうなと、あらすじだけ知った上でじつは妄想だけしていたんです。
20歳くらいの時に、情報としてショヴォーというイラストレーターは知っていたのですが、実際の本を読んだのは30歳過ぎくらいの時でした。サティもショヴォーもとても面白い人で、両方作家のパーソナリティーに惹かれたというのはあります。ショヴォーは親の関係で無理やり医者にならされたんですね。第一次世界大戦の頃に軍医として勤めて、でもやっぱりそういう仕事は自分に合わないと思って、そして戦争で辛い思いもされたようで、戦後は医者を辞めて作家になろうと思い、子供向けの小説を書く作家になった。最初に出版された本は別の有名なイラストレーターの絵がついていたんですけど、最終的には自分で絵も描いて。彼は彫刻もつくったりして様々な創作活動にのめり込んだようです。
そんなにポピュラーにはならなかったんですけど、彼の素朴な絵の魅力に僕は本当に惹きつけられました。でも内容的には非常に辛辣なというか、批判的な批評的なところがとても強くて。このお話自体、いろいろ権力や力をもった歳をとった者が、実は周りに自分が恐れられているということに気づかない…自分自身を知ることっていうのはなかなか難しいことだなぁというのがこのストーリーから思い知らされるわけです。実際、自分の方が頭がいいと思いながら数が数えられなかったりとか、そのこと自体に気づいていない、というような…。ちょうど90年代にブッシュ政権がイラン・イラクに進言し始めて、アメリカの権力の横行みたいなものを僕がすごく身近に思っていた時期だったので、そういう権力者の愚かさ、力を持っていながら愚かなことをしているということに気づかないという、そういうパワーに対する批判にもとれる内容だと思ったので、それでこの作品をアニメーションにしたいと思いました。
『頭山』という作品をつくった直後に色々調査に行って、お孫さんやご遺族の方にお話をお聞きしたんです。これはショヴォーの三男坊に語り聞かせるという形で書いたようなのですが、その三男坊さんの奥様がご存命だったので、晩年にショヴォーが暮らしたというアパートに行って、こういうのを作りたいんですけどというお話をして、少し当時の思い出話なんかも聞かせていただいて、作品化となりました。
原作もまだ新書版で読めるので是非読んでいただければと思います。実はもう少し長い話というか、たぶんあれをきっちり全部描いたら30~40分くらいの作品になっちゃうんじゃないかなと思っていたのですが、相当エッセンスをかいつまんでひとつのまとまった作品として描きました。ただ、絵はショヴォーの魅力をなるべく残すようにして、デザインを崩さないようにして作った作品です。だから僕の作品のなかでは絵柄が特殊なのかもしれないですね。

『バベルの本』
これは1996年頃に作った、だいぶ古い作品で、NHKのプチプチアニメという枠でしばらく放送していました。たぶん20代以降の方ですとTVで観たという人も多いかと思います。
子どもがTVを見ていて、これが始まると止まってしまってずっと見入ってしまう、釘付けになったという話も聞いて。ある意味すごく怖い話ですね、今思うとこういう子供向けの枠の番組でかなり自由なことを作らせていただいて良かったなと思うんですけど、原作もかなり大人向けのものというか。
直接原作というわけではないですが、僕はアルゼンチンの幻想文学者のホルヘ・ルイス・ボルヘスという作家が好きで、彼の作品を最初は大人向けの短編アニメーション集みたいな形でできないかという話から、だんだんプチプチアニメの方で作れるかもしれないということになり、ある意味ちょっとしたデモ版をつくるというつもりで作った作品です。
今振り返ってみると、ちょうどこれを作った直後に僕は『頭山』という作品を作り始めていて、内容的にもオリジナルのストーリーというかお話しなんですけど、『頭山』と繋がるところが自分で観てもあるなという…大きな何か未知の生き物の上に一本ヤシの木が生えていて、(『頭山』とは視点が逆ですが)その上で災難というか冒険をするという兄弟の話なんですけど、何かその自分自身が知る由のない巨大な世界と小さな世界の接続みたいなもののテーマが自分としては興味があったんじゃないのかなと、今振り返ると思います。
これは実はすごく短期間に作った作品で、プチプチアニメで作れるかも知れないということから、ほぼ一日でストーリーと絵コンテを描き下ろしまして、実際の制作も一か月ほどで作ったというのがあります。まぁ放送の枠がけっこう直前に迫っていたというのもありますね。そこのところでなかなか自分としては実はもう少しこうしたかった、ああしたかったという思いがあったんですけど、時間的な制限で満足いくところまで作れなくてですね、その辺の思いが『頭山』の制作に繋がっていったのではないかという風に、今振り返ると思います。

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●絵本と最近のアニメーションの創作のお話し
僕は短編アニメーションの中でいろんな可能性を常に探ってきて、活動の中心として考えていました。2002年の『頭山』を作ったあと、長年の夢であったカナダの国立の映画スタジオ:ナショナル・フィルムボード・オブ・カナダというところで日本とカナダの共同制作ということで『マイブリッジの糸』という短編を作ることができて、大人が鑑賞して楽しめるというような短編の制作も順調に進められたんですけど、なぜかそれと同時に絵本の依頼が少しずつ出てきまして。「おやおや おやさい」とか「くだものだもの」といった、石津ちひろさんと一緒に作った絵本が、お陰様で非常にロングセラーでして、いまだに版を重ねて読み継がれています。
僕はアニメーションではどちらかというとマイナーな存在で、知ってる人は知ってるという感じがあるんですけど、絵本の方はやはり部数もそれなりに出ていて小さなお子さんをお持ちの親御さんは絵本の方で僕の絵や作品を知ってくれているようです。NHKで色々な作品を作って以降、新たな若い読者がいてくれるのも非常にありがたいです。
僕の中には常に楽しんでもらいたいという思いと、子供に向けた思いがあります。
アニメーションに魅了されたのも、感覚とか情操を揺するところが幼児も楽しめる、という思いが僕の中であるんですね。大人はどうしても意味を考えがちなので分からないと拒絶されることもあるんですけど、お子さんはすんなりと感覚の世界に入ってきてくれるので、その辺で絵本作りというのを両立させながら制作を進めています。
今年もサティの後にもう一本『怪物学抄』という6分くらいの短い作品を作りまして、これはちょうどまだ発表はこれからなんですけど、絵本化の企画も通りましたので、もしかすると絵本の方で皆さん先に日本では接していただいて、後でまた劇場での公開があるかも知れませんので、その辺も気にしていただければ幸いです。

●お客様からの質問コーナーより
映像も絵本も初めて鑑賞しました。画風がどれも結構違うなというのが印象的でした。サティの「パラード」では曲が当時のポップスやジャズを盛り込んだとのことでしたが、監督の絵や色合いもポップだなという印象を受けました。そういうあたりを意識されて描かれたのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。

そうなんです、僕のフィルムはこれより以前のものはどちらかというとモノトーンというかダークな色彩、やや茶色がかったような色彩が多かったと思います。『頭山』『カフカ 田舎医者』もシックというかダークな色合いで。年齢のせいもあるのかも知れないですが、サティも50歳の時に作曲を始めて、僕も偶然(サティが)生誕150周年だと思い立ってこれを作ろうと思った時が50歳の時だったんですね。劇中には「50歳になっても何も分からない」というようなセリフがあったと思いますが、あれもすごいシンパシーを感じてですね。あれはサティ一流の皮肉ですが(笑)。
サティも不思議な作曲家で、彼しかないような独特の響き、美しさや繊細さを持ちながらも軽やかで、でも決してその軽やかというものが悪い意味の軽やかさではないんですよね。いわゆる軽薄とか何か薄っぺらいというものではなく、奥行きがあるけれども軽やかな部分があって、そこのところが作りたいなと思った時にとても共感して。
ですから、たぶんサティがこういう色彩とか感覚に僕を導いていってくれたんじゃないかなぁと思っています。以前の作品だったらこんなに赤とか黄色とか原色を使おうとは思いもしなかったですね、サティからの影響というものがとても大きいです。感覚としてもバレエなので何となくシークエンスとか筋はあるんですけれども、所謂ストーリーとかそういうものはなくて。音楽と一緒に踊るという感じでアニメーションを作りたいと思ったので、本当に描いていて今までの制作の中でも一番楽しく作れた作品なんです。バレエ、サティの音楽と一緒に踊るという感覚も得て、ダンスをしている感じでアニメーションが作れたので、その辺の軽やかさとか楽しさが観た方にもちょっとでも伝われば良いなと思っています。


山村浩二監督特集 上映時間
<3/3(金)まで>11:40~12:12/13:00~13:32
<3/4(土)・3/5(日)>10:30~11:01/14:30~15:01

【関連イベントのご案内】山村浩二監督 アニメ原画展
山村監督の貴重な原画を展示します。不思議な創作世界をお楽しみください
期間:2/25(土)~3/5(日)
場所:アミューあつぎ5F ルーム504
11時~18時(最終日は16時まで)
入場無料

作品詳細はこちら

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